東京都町田市忠生(ただお)エリアで活動している、500年先のcommonを考えるプロジェクト「YATO」に参画し、忠生周辺に暮らす人への聞き書きを中心に構成した、書籍『郷土詩』を企画・編集しました。
「YATO」の活動拠点である簗田寺の周辺は、長い時間をかけて形成された谷状の地形から「谷戸(やと)」と呼ばれ、古くから水が集まり、それによって人々が集う場所でもありました。「YATO」では、谷戸という特有の地形を取り巻く環境や歴史を学び、これからの500年に向かって、今いちど人が集う場所の在り方や記録を受け渡す方法を模索してきました。
「YATO」の活動は、忠生とその周辺に暮らす人たちに話を聞く「聞き書き」からはじまりました。壮大ではないかもしれないひとりの経験を通じて見えてきたのは、生き生きとした生活の記憶であり、そしてその背景にある、大きく変化を遂げた町田の現代史でした。
お話のなかには、私たちの理解や想像が及ばないこともあり、何かをつかもうとするとこぼれ落ちていく、ということを繰り返していたように思います。ただ、これまで当たり前だと思っていたことが疑われ、今いるこの場所が揺さぶられるという体験は、言葉になる前に人の営みがあるということを実感させてくれた、未来に受け渡していきたい経験でもありました。
こうして受け取ったお話を、どう記録すればよいのか。
語り手の姿をおぼろげにし、語られた時代を混在させることで、この土地が育んできた詩(うた)を浮かび上がらせることはできないか、この土地を知らない人たちにとっても普遍的にある心の中の記憶や原風景を呼び覚ますことができないかと考え、この本を「郷土詩」と名付けました。
書籍『YATOの郷土詩』
企画・写真:波田野州平
企画・編集:森 若奈
文字起こし:根間美砂子
デザイン:Aim Design(根岸篤男)
発行:2022年03月21日
発行元:公益財団法人東京都歴史文化財団 アーツカウンシル東京